「京ことば」について

京ことば 語り

市田ひろみ

一口に京言葉(京都弁)と言ってもひとつの表現で決まったものではありません。おそらく京都らしいと思われているものは祇園や先斗町などの花街で使われている言葉ではないでしょうか。

しかし、花街で使われている言葉はごくせまいエリアに特別な発展をとげた言葉で、私たち京都市民が日常的に使っているものではありません。日常的に私たちの使っている言葉こそ京都の京都弁なのです。このかるたで後生に伝えてゆき、京都の文化の一端を知って頂きたいと思います。

京ことばと京都の音風景

大阪市立大学大学院 教授 中川 眞(音楽学・サウンドスケープ論)

かるたはサウンドスケープ(音の風景)の表現でもあります。世界中、ひとつとして同じサウンドスケープをもつ街はありません。ひとつひとつの街が個性あるサウンドスケープをもっています。そして、それを決定づけるのは何か?人間の声なのです。人々の言葉なのです。京都には京都の、東京には東京の雑踏の響きがあります。パリも、リオデジャネイロも同様です。かつて、ふるさとの声を聴きにいくために上野駅を訪れた人がいましたが、地域の言葉=方言は、風土と切り離すことのできない、懐かしい大地の響きなのです。

この「京ことばかるた」には、そういった京都の水や大気、樹々のさざめき、そしてそのなかで営まれる人々の暮らしの息づかいが聞こえてきます。しかも、そこには千年のサウンドスケープの音が刻み込まれている。ある言葉は千年近く前の人々が声に出していた。別の言葉は、ここ百年ほどの間に出現した新しいものだ・・・。

そんな声の響きの歴史が、一枚一枚の札のなかに潜んでいます。そして、驚くべきことに、それらがいまもなお生きているのです。そこが京ことばの希有なところです。こんな言語は、世界にどれほどあるでしょうか。まさに、これこそ文化遺産といえるのではないでしょうか。ひょっとしたら紫式部が口に出していた言葉を、あなたも使っているかもしれません。

市田ひろみさんの読み札を聞かれて、あなたもぜひ声に出して読んでいただきたいと思います。

※このCDに使われている環境音は、京都の町で収録された音を使用しています。